今回は、学校を選ぶにあたって、”コスパの良い学校”について、独自に分析しようと思います
※以降、明示している学校の偏差値は、24年能開センター発表の偏差値となります
まず、”コスパの良い学校”とは何ぞや?
ここで言う”コスパの良い学校”の定義は、下記とします
“入口”が低く、“出口”が高い学校
入学時の偏差値が低く入り易いにも関わらず、卒業時に高い進学実績を誇る学校、という事で、シンプルに言うと、生徒のポテンシャルをそれだけ伸ばしている、という事によります。
“コスパの良い学校”をどうやって分析するか?問題
言葉では、入学時の偏差値に対し、進学実績が良ければ良い、と単純なのですが、実際算出しようとすると複雑です。
“入口”での問題:入学時の偏差値帯が広く、ベースライン(基準)がボヤける
下記いくつかの要因により、入学時の偏差値帯がバラついてしまうため、高いポテンシャルを持った子が順調に育っただけなのか、ポテンシャル以上の高い成長を見せたのか、よく分からないという問題があります。
入学時に複数コースが存在する
例えば、下記のような「上位コース」が存在する学校です
- 清風:プレミアム(60) / 理III(52) / 理II(45) / 理I(38)
- 大阪桐蔭 :英数選抜(53) / 英数(45)
- 開明:スーパー理数(52) / 理数(46)
※括弧内数値が偏差値
出口のところで触れますが、どの学校も、中学で入った際のコース別に基づいた進学実績まで公表してはいません。大抵は、上位コースで入った学生が進学実績を牽引しているはずですが、詳細の割合・内訳まで分かりません。
偏差値60のコースで入った子の進学実績、偏差値45のコースで入った子の進学実績、それぞれが分からない以上、コスパ判断し難いわけです。
高校からの入学組が混ざる
また、中高一貫校では、中学入試だけでなく、高校入試でも学生を取るケースがあります。
例えば、清風(250名)や、大阪桐蔭(450名)、開明(80人)、洛南(144名)など。
最終の進学実績は、高校入学組も混ぜて発表してるわけですから、これだと、純粋な中学入学組の成果が分からなくなるわけです。(一般的に中学入学組のほうが進学実績が良いとは思いますが)
“出口”での問題:進学実績は生徒数(母数)に依存する
次に、”出口”での問題で厄介なのが、学校毎にそもそも生徒数が異なる点です。
進学実績(合格者数)だけに着目すれば、生徒数が多いほうが有利に決まっています。
例えば、A校:京都大10名合格、B校:20名合格と聞くだけだと、B校のほうが優秀なんだろうなと認識しますが、A校は1学年130名、B校が1学年400名となると、割合的には、A校が優秀、となるわけです。
では、1学年全体を母数として見て、難関大への進学割合で比較すれば良いかというと、そうとも言い切れません。入学時から難関大に進学予定の無いスポーツコース在籍の生徒を母数に含めたりすると、それはそれでどうやねん、という話ですし、結構ややこしい問題です。
進学実績は、「大阪公立大」以上の大学へ”何割”進んだか?で定義
例えば、ある中高一貫校が、京大に5名合格出したものの、神戸大、阪大、大阪公立大の合格数の合計も5名程度、となると、一部の上位生徒は凄いけど、ボリュームゾーンは大丈夫か?という話になります。
当サイトでは、最難関の中高一貫校より、難関+中堅の中高一貫校をベースにしているので、東大や京大に合格している人数よりも、ある一定の大学以上、具体的には大阪公立大以上の合格実績を、当サイトでの合格実績指標として定義しようと思います。
- 合格実績としてカウントする「難関大学」カウント条件
- 東大・京大
- 阪大・神戸大・大阪公立大・京都府立大
- 一橋大・東京工業大・東京外国語大・東京都立大・筑波大
- 北海道大・東北大・名古屋大・九州大
- 上記以外の国立医学部
- 早慶や関関同立など私立合格者数はカウントしない(1名で合格実績を複数作れるため)
- 浪人生はカウントしない(予備校の実績とも言えるし、卒業生が多い学校が有利になるため)
コスパ調査5校
では、ここからようやく本題のコスパ調査をしていきます。
精度の高い値を出すために、
- 入学は中学入試のみ(高校入学が無い)
- コース分けが無い(全員同じコース)
上記を満たした学校を調査します。具体的には、金蘭千里中学、高槻中学、六甲学院中の3校。
次点で、高校入学組が少し入りますが、清風南海、開明の2校を調査します。
①金蘭千里中学 入学時偏差値 :42/46 進学実績割合:22%
まず、金蘭千里ですが、1日目午前+1日目午後+2日目午前と3回入試で多少偏差値の上下はありますが、入学してくる層に大きな振れ幅はないので、コース違いや、高校入学組などの”ノイズ”を考慮する必要がありません。
項目 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
受験者数 | 171※ | — |
下記難関大学以上の進学実績合計 | 37 | 22% |
東大・京大 | 1 | 1%未満 |
大阪大・神戸大・大阪公立大・京都府立大 | 26 | 15% |
一橋大・東京工業大・東京外国語大・東京都立大・筑波大 | 1 | 1%未満 |
北海道大・東北大・名古屋大・九州大 | 3 | 2% |
上記以外の国公立医学部 | 6 | 3% |
※受験者数は金蘭千里が公表している数値を採用
- 上位3割程度は、難関大学に行ける学力を有している
- 海外大学の進学も多い
22%が現役で難関大学に行けている事から、運悪く落ちた部分も考慮すると、およそ上位3割ぐらいは、大阪公立大以上の難関大学に行ける学力を有していると推測します。
入口の偏差値は40台という事を踏まえると、確かにコスパは良い気がしますね。成績上位には高槻残念組など難関校から少し流れているとは言え、それだけでこの実績は出せないでしょうから、立派だと思います。
また、金蘭千里の特徴として、海外大学への進学実績が多い点が挙げられます。23年度は現役で7名進学しています。171名で入口偏差値40台で海外大学7名と考えると、結構異質というか、金蘭千里ならではのカルチャーなんでしょう。難易度の分析までするつもりはありませんが、少なくとも英語が出来ないと話にならないでしょうから、それなりの学力があるのは間違い無いでしょう。(あと、親の財力も当然ながら高いでしょうね)
海外大学への進学も昨今ブームというか、昔より増えてきていますし、学校として海外大学への進学に多く対処している実績は、海外大学を意識した学生にとっては魅力的な要素かと思います。(学校として海外大学進学の前例がないと、全くフォローしてくれない・出来ないケースとか普通にあるので)
②高槻中学 入学時偏差値 :57/63 進学実績割合:40%
次に、金蘭千里中学や開明の上位に位置する高槻中学です。
前期も高い偏差値ですが、後期は特に偏差値が跳ね上がるのが特徴です。
項目 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
受験者数 | 261※ | — |
下記難関大学以上の進学実績合計 | 103 | 39% |
東大・京大 | 27 | 10% |
大阪大・神戸大・大阪公立大・京都府立大 | 53 | 20% |
一橋大・東京工業大・東京外国語大・東京都立大・筑波大 | 4 | 1.5% |
北海道大・東北大・名古屋大・九州大 | 4 | 1.5% |
上記以外の国公立医学部 | 15 | 5% |
※受験者数は公表していないため、大阪府提供の高校毎の私立生徒数から抜粋
- 上位5割程度は、難関大学に行ける学力を有している
39%が現役で難関大学に行けている事から、運悪く落ちた部分も考慮すると、およそ上位50%ぐらいは、大阪公立大以上の難関大学に行ける学力を有していると推測します。また、東大・京大は、上位10%です
金蘭千里と比べると、大阪大・神戸大・大阪公立大・京都府立大の層が+5%程度多く、また、最難関の東大・京大が+9%という事で、ここら辺は、さすがに入口の偏差値で10以上勝る高槻の結果、というとこですね。
③六甲学院中学 入学時偏差値 :54/63 進学実績割合:36%
六甲学院も、高槻中学と同様、後期入試の偏差値が跳ね上がる傾向にあります。
項目 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
受験者数 | 175※ | — |
下記難関大学以上の進学実績合計 | 63 | 36% |
東大・京大 | 20 | 11% |
大阪大・神戸大・大阪公立大・京都府立大 | 33 | 19% |
一橋大・東京工業大・東京外国語大・東京都立大・筑波大 | 2 | 1% |
北海道大・東北大・名古屋大・九州大 | 7 | 4% |
上記以外の国公立医学部 | 1 | 1%未満 |
※受験者数は公表していないため、募集要項185名から10名程度は転校等するものと想定し175名
- 上位5割程度は、難関大学に行ける学力を有している
- 難関大の割合は、近い偏差値帯である高槻(39%)と比べると、六甲学院が幾分下(36%)
36%が現役で難関大学に行けている事から、運悪く落ちた部分も考慮すると、高槻と同様、およそ上位5割ぐらいは、大阪公立大以上の難関大学に行ける学力を有していると推測します。また、東大・京大は、上位11%です。
厳密には、高槻より難関大学の割合が少しだけ低いですが、同様に入口の偏差値も六甲学院が少し低いので、本サイトで定義した難関大学の定義もそこそこ指標として正確なのでは?、と勝手に感心しています(正直誤差レベルではありますが)
ちなみに、東大・京大への最難関大への割合は、逆に高槻と比べ、六甲学院のほうが1%勝っています。
④清風南海中学 入学時偏差値 :63/58 進学実績割合:34%
※清風南海は2024年度データで更新しています
北の高槻、南の清風南海、という感じで偏差値はほぼ同等です。少数(40人)ですが高校入学組が混ざるので、中高一貫の実績という視点では、多少ノイズはあります。
項目 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
受験者数 | 277 | — |
下記難関大学以上の進学実績合計 | 111 | 40% |
東大・京大 | 28 | 10% |
大阪大・神戸大・大阪公立大・京都府立大 | 58 | 20% |
一橋大・東京工業大・東京外国語大・東京都立大・筑波大 | 3 | 1% |
北海道大・東北大・名古屋大・九州大 | 10 | 3% |
上記以外の国公立医学部 | 12 | 4% |
※受験者数は公表していないため、大阪府提供の高校毎の私立生徒数から抜粋
- 上位5割程度は、難関大学に行ける学力を有している
- 六甲学院、高槻と比べると、東大・京大層が、阪大層と国公立医学部層に流れている
40%が現役で難関大学に行けている事から、運悪く落ちた部分も考慮すると、およそ5割ぐらいは、大阪公立大以上の難関大学に行ける学力を有していると推測します。また、東大・京大は、上位10%です。
ライバル校として扱う高槻とほぼ同じ結果ですね。入学時の偏差値が同レベルとは言え、入学して6年間別々に教育されるわけなので、もう少し違いが出てもおかしくないような気がしますが、何だか不思議ですね。。
⑤開明中学 入学時偏差値 :52/51/52 進学実績割合:26%
こちらも高校入学組がいるので、中高一貫校の純データとは言い難いですが、一応調べてみます
項目 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
受験者数 | 239※ | — |
下記主要大学 進学実績合計 | 63 | 26% |
東大・京大 | 8(7) | 3% |
大阪大・神戸大・大阪公立大・京都府立大 | 41(7) | 17% |
一橋大・東京工業大・東京外国語大・東京都立大・筑波大 | 3(2) | 1% |
北海道大・東北大・名古屋大・九州大 | 6 | 2% |
上記以外の国公立医学部 | 5 | 2% |
※受験者数は公表していないため、大阪府提供の高校毎の私立生徒数から抜粋。括弧内は総合選抜(推薦)による合格者
- 近い偏差値帯である金蘭千里(22%)と比べると、開明が幾分上(26%)
- 総合選抜型での合格数が異常に多い(独自進学実績63人の内、13人)
26%が現役で難関大学に行けている事から、運悪く落ちた部分も考慮すると、金蘭千里と同様、およそ上位3割ぐらいは、大阪公立大以上の難関大学に行ける学力を有していると推測します。また、東大・京大は、上位3%です。
開明の大きな特徴は、総合選抜型(要は推薦入試)での合格数の多さです。
特に、京大の現役合格8名のうち、大部分の7名が総合選抜型での合格で、学科の内訳も経済2/健康3/工1/農1となっており、何かと進学実績目当てと、槍玉に上がり易い”健康”が一番多い、という結果です。
ちなみに京大の総合選抜で”健康”の合格者トップは、開明と、ご近所である大阪桐蔭のそれぞれ3名です。これをどう捉えるか、人によってそれぞれなのかと思います。
素直な心で受け取れば、今時の多角的な評価に柔軟に対応した”開明の強み”、と言えるのでしょうが、受け取り方も様々なので。。
(補足)調査してみて感じたこと
何だかんだで、進学実績も概ね偏差値順の通りと言えましたね。
また、これは言っても仕方無い問題なのですが、やはり進学実績をモノサシにするやり方は、色々限界があるなと感じました。
進学実績で計った時、何が問題かと言うと、結局どこかに合格しない限り、成績の良し悪しに関わらず、”実績無し”として扱われてしまう点です。
例を挙げると、偏差値の高い東大(理3)や、京大(医)に落ちるのと、偏差値の高くない地方の国公立大で落ちたとしても、外から見ると、全く区別が付かないわけです。
いくら、入学時から偏差値爆上がりした凄い生徒がしたとしても、結果的に進学実績の形に残らないと、そのような生徒がいた事は、外から分かりようがありません。
こういう状況だと、学校としては少しでも受かる可能性の高い学校を進めるのもしょうがない気がしますね。
理想は、共通テストでの、学校毎の生徒数の得点率等を測れれば、純粋な学校のレベルを把握出来るんでしょうけど、まぁ現実難しいでしょう。もう少し、フラットに学生のレベルを測れる指標があればな、と感じました。